「ノン,あるいは支配の空しい栄光」

[解説]
ポルトガルはその長い歴史の中で、栄光と敗北をくり返してきた。紀元前2世紀のルジタニアの英雄ヴィリアトの死、1475年のトロの戦いでの敗北と国王アフォンソ5世の死、1490年のアフォンソ王子の死、1578年のアルカサル・ケビルでの壊滅的な敗北とセバスチャン国王の戦死。マノエル・ド・オリヴェイラ監督は、この映画を通して、ポルトガルの空しい栄光の歴史を描き出していく。かつて、ポルトガルの詩人ルイス・ド・カモンイスが『ウス・ルジアダス』(1512)の中で謳い上げたものを、監督なりに映像によって表現しようとしたものとも解される。現代の戦地の将校や兵士たちが、ポルトガルの歴史上の人物となって各時代の英雄たちの戦いを経験していき、再び現代の戦地へと戻る構成になっている。

[物語]
1974年の春、アフリカの植民地戦争に参加している兵士たちは、不毛な戦争に対する不平不満から議論を始める。それを聞いたカブリタ少尉は、ポルトガルの過去の戦争の話を始める。

紀元前二世紀、まだポルトガルではなくルジタニアと呼ばれていた地方に侵略してきたローマ軍に対して、智勇に長けたヴィリアトの指揮の下、住民たちは勇敢に対抗した。力では勝てないとみたローマ軍は、ヴィリアトの部下を買収し暗殺させた。
やがて、十字軍の時代にポルトガル王国が形成されていき、アフォンソ1世以降、歴代の国王はイベリア半島の統一と北アフリカのムーア人征服を目論む。15世紀後半、アフォンソ5世はスペインの一部の貴族と謀ってカスティリャの王位を狙い、レオン地方の大部分を占領したが、トロの戦いに敗れその野望ははかなく消えた。
ジョアン2世は1490年4月に息子のアフォンソ王子とカスティリャのイザベラ王女を政略結婚させた。が、8月に王子は落馬して死去する。王子の死により、平和的な手段によるイベリア半島統一の野望は潰えた。ポルトガルの野望は海洋帝国を目指した植民地主義へと向かったが、同時に新世界への道も開いた。ヴァスコ・ダ・ガマは、インド航路を確立した。
16世紀後半、セバスチャン王はモロッコ遠征を強行したが、アルカサル・ケビルで壊滅的な敗北を喫し、国王も戦死した。ポルトガル史上最も手痛い敗戦であった。

これらの歴史を回顧しながらカブリタ少尉は支配することの無益さを慨嘆する。翌朝出発した小隊はゲリラの襲撃を受け、少尉は重傷を負う。昏睡の中で少尉はセバスチャン王の幻を見るのだった。

     
<スタッフ>  
  製作: パウロ・ブランコ
  脚本・台詞・監督 マノエル・ド・オリヴェイラ
  撮影: エルソ・ロケ
  美術: ルイス・モンテイロ
    マリア・ジョゼ・ブランコ
  衣装: イザベル・ブランコ
  音楽: アレハンドロ・マッソ
  編集: マノエル・ド・オリヴェイラ
    サビーヌ・フラネル
<キャスト>
カブリタ少尉/ヴィリアト/ドン・ジョアン・ ド・ポルトガル(三役) ルイス・ミゲル・シントラ
マヌエル軍曹/ルジタニアの兵士/ドン・ジョ アン・ド・ポルトガルの従弟 ディオゴ・ドーリア
兵士サルヴァドル/ルジタニアの兵士/アルカ セルの兵士 ミゲル・ギリェルメ
カポ・ブリト/ルジタニアの兵士/アルカセルの貴族 ルイス・ルカス
ドン・セバスチャン マテウス・ロレナ

「コロンブス 永遠の海」

[解説]
ポルトガルが誇る、巨匠・オリヴェイラ監督が描く大航海時代の果てしない夢――。
それはコロンブスの謎を追い、旅する夫婦の絆の物語。

「新大陸の発見」で知られるクリストファー・コロンブス(1451〜1506)は、これまでイタリア人ともスペイン人ともいわれていた。しかし彼の没後500年にあたる2006年、「コロンブスはポルトガル人だった」とする新説が、マヌエル・ルシアーノ・ダ・シルヴァという歴史研究者によって発表された。映画「コロンブス 永遠の海」は、この研究者が妻とともに、コロンブス生誕の謎を追った半世紀にわたる旅を通して、ポルトガル人特有の、海の彼方の世界への憧れ、ロマンティシズムを描いている。監督は、101歳にしてみずみずしい感性を失わないポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ。彼は「コロンブス=ポルトガル人説」に触発されて、本作を製作、独特の自在な映像表現によって、ポルトガルの精神、サウダーデ(郷愁)の感情を明らかにした。

オリヴェイラ監督は、1908年ポルトガル・ポルト市生まれ。1931年の短編ドキュメンタリー「ドウロ河」が監督第一作。無声映画時代から今日まで、特に80歳になってからは、ほぼ1年に1作という驚異的なペースで新作を発表し続けている。2008年カンヌ国際映画祭では生涯功労賞が授与され、現在、世界の映画人に最も尊敬されている最高齢の映画監督である。「コロンブス 永遠の海」は、ポルトガル人の、海に対して、また世界に対しての思いに迫ったオリヴェイラ監督の到達点とも言える。主人公夫婦の老年時代を演じているのは、オリヴェイラ監督自身とマリア・イサベル夫人である。この作品は、映画を探求し続けたオリヴェイラ夫妻の人生と、コロンブスの足跡をたどりながら愛情を深めていく主人公のシルヴァ夫妻の人生が、重なり合って織り成された、夫婦の絆の物語である。

[物語]
仲睦まじい夫婦、医師マヌエルとシルヴィア。二人は新婚早々、コロンブスのルーツを探求する旅に出る。ポルトガルのサグレス岬やベージャ城などの大航海時代の遺跡、ゆかりの地を巡る。
――それは47年を経て老年になっても変わらなかった。老夫婦は、アメリカに渡って、ニューヨークやカリフォルニアを訪ね歩きながら、コロンブスへの想いを深めていく。エンリケ航海王子やヴァスコ・ダ・ガマが海を渡り、ポルトガルが世界の強国へと上りつめた大航海時代、人々は何を想い、何を求めて果てしない海へと向かったのか。そして、あのコロンブスは、本当に、ポルトガルの旅人たちの一人だったのか。夫婦はついにマデイラ諸島のある島へ。彼らが長い旅路の果てに見出したものは――。

<スタッフ>
  監督 マノエル・ド・オリヴェイラ
  原案本 「コロンブスはポルトガル人だった」
    マヌエル・ルチアーノ・ダ・シルヴァ
    シルヴィア・ジョルジュ・ダ・シルヴァ
  プロデューサー フランソワ・ダルテマール
  エグゼクティブ・プロデューサー ジャック・アレックス
  第一助監督 オリヴィエ・ブファール
  記録 ジュリア・ブイゼル
  衣装 アデライド・マリア・トレパ
  撮影監督 サビーヌ・ランスラン
  美術 クリスチャン・マルティ
  音響 アンリ・マイコフ
  編集 ヴァレリー・ロワズルー
  音編集 エルザ・フェレイラ
  ミキシング ジャン=ピエール・ラフォルス
  音楽 ジョゼ・ルイス・ボルジェス・コエーリョ
  通訳 ミゲル・ボルジェス・コエーリョ
<キャスト>
  1946年〜1960年  
  マヌエル・ルシアーノ リカルド・トレバ
  シルヴィア・ルシアーノ レオノール・バルダック
  2007年  
  マヌエル・ルシアーノ マノエル・ド・オリヴェイラ
  シルヴィア・ルシアーノ マリア・イザベル・ド・オリヴェイラ
     
  エルミニオ ジョルジュ・トレパ
  守護天使 ロウレンサ・バルダック
  マヌエルの母 レオノール・シルヴェイラ
  ポルト・サント島の美術館長 ルイス・ミゲル・シントラ