本日は岩波ホール創立50周年記念作品の第一弾、ジョージア映画「花咲くころ」にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。岩波ホールは1968年のちょうど2月9日に開館いたしました。オープニングにはこの壇上に野上彌上子先生、大内兵衛先生、新劇の山本安英さん、お能の近藤乾三さんなど多くの方がおいでくださって、お祝いをしてくださいました。ホールができましたのは、前社長の岩波雄二郎が、ここに多目的ホールを作って文化的活動をしたいという思いでスタートしたものでございますが、その意向を引き受けまして、総支配人の髙野悦子が溢れるエネルギーとアイデアをもって活動を始めました。当時は、劇場の支配人が女性だというのは非常に珍しいことで、おそらく最初の人ではないかといわれております。初期の数年の間は、色々な講演つきの映画の講座ですとか、クラシック音楽の演奏会、演劇、古典芸能、さまざまなテーマの講演会などの活動をしておりましたが、1974年になりまして、映画の専門館となりました。そのときに「エキプ・ド・シネマ」という世界の埋もれた映画を発掘して上映していこうという運動をスタートいたしまして、それ以来、今まで246本、55カ国の作品を公開しております。
実は髙野悦子は5年前、45周年記念の今日に亡くなりました。今日が命日でございます。これは偶然ではありませんで、だいぶ弱っていた髙野が、この日が45周年だということを心にずっと留めて頑張っていた結果だと思います。そして息を引きとりました。それほど岩波ホールに半生を捧げた人でございました。ロビーに赤い服が展示してございますが、これは髙野が愛用しておりました服で、60歳を過ぎてからはなるたけ赤い服を着ておりました。後でご覧いただければありがたく存じます。
さて、この「花咲くころ」でございますが、1992年旧ソ連崩壊の後、ジョージアが内戦状態にありました時の、二人の少女たちの青春を描いております。大変厳しい状況の中で懸命に生きた、非常に眩しいような青春の映画でございます。これは、ナナ・エクフティミシュヴィリとジモン・グロスの共同監督ですが、ナナ監督の少女時代の思い出をもとに作られております。グルジアもその内戦状態も収まりまして、今では優れた作品が多く製作されております。今年は岩波ホールでもたくさんのグルジア映画をご紹介しますので、ご期待ください。
皆様がたびたび足を運んでくださり、見守ってくださったお陰で、ここまで到達することができました。今後とも、皆様の心の糧になるような、そして、いろいろな国の人々の喜びや悲しみに思いを馳せていただけるような作品を上映していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
支配人 岩波律子