本日はキルギス・フランス・ドイツ・オランダ・日本合作の「馬を放つ」の初日に、大勢お越しくださいまして、ありがとうございます。岩波ホールの岩波律子でございます。
お蔭様で岩波ホールは今年の2月で50周年を迎えまして、この作品は50周年記念の2弾目になります。今までに、私どもは247本、この作品を含めて56カ国の映画を上映してまいりました。私どもではキルギス映画の上映は初めてでございます。
この監督のアクタン・アリム・クバトさんも初めてなのですが、ほかに「あの娘と自転車に乗って」(98)「明りを灯す人」(2010)という作品をご覧になった方もおありかと思います。キルギスは中国北西部に国境を接し、標高5000メートルを越える天山山脈のふもとに広がっている山岳と草原の国でございます。この国は「馬は人間の翼である」ということわざをもった国でございます。監督の話では、こどもの頃から自転車と同じ感覚で馬を与えられていたということです。
そして、この映画は、監督の村で起きた実話を基にしたもので、サラブレッドを盗む人がいたそうです。単に素晴らしい馬に乗りたかったというだけなのだそうですが、それを基に作られております。
そして、作品の中では、次々と馬が盗まれていき、野に放たれます。盗人はなぜこのようなことをしたのかというのが映画の問いかけでございます。そのほかにも、この映画の中で、人々の暮らしや宗教的なことも、美しい映像で描かれております。それが、監督のこだわりとして、自然光で撮影されております。そして、クバト監督は「世界中でどんどんグローバリゼーションが進んでいるが、その中で昔の生活に戻るということではなく、自らのルーツを大切にして、自分が誰であるかを考えていかなければならない」という風に仰っています。尚、監督自身が主役を演じていらっしゃいまして、これは以前の映画で良い俳優が見つからなかったので、自分で演じたら主演男優賞を貰ってしまったということでございます。
最後に、この素晴らしい映画の上映機会を与えてくださいました、配給会社ビターズ・エンドの皆さまに、心より御礼を申し上げます。どうぞごゆっくりご覧くださいませ。本日はありがとうございました。