「ゲッベルスと私」初日支配人挨拶
2018年06月21日(木)

「ゲッベルスと私」初日支配人挨拶

支配人挨拶

本日は、オーストリア映画「ゲッベルスと私」の初日に大勢お越しくださいまして、本当にありがとうございます。岩波ホールの岩波律子でございます。

お蔭様で岩波ホールは今年の2月に、創立50周年を迎えまして、上映作品数は本作で250本目となりました。国籍の数では、今回、オーストリア映画が新たに加わり、56カ国となりました。

昨日までは、「マルクス・エンゲルス」という映画を上映しておりまして、19世紀後半のお話でしたが、今回の「ゲッベルスと私」は20世紀半ばで割合すぐあとのお話でございます。

主人公のポムゼルさんという女性ですが、この方はナチスの宣伝大臣ゲッベルスの秘書を3年間つとめていました。戦後はソ連軍の捕虜となり、強制収容所に5年間抑留されていました。インタビュー当時は103歳でしたが、106歳まで生きられました。当時、彼女はナチスの支持者ではなく、政治に一切関心のない人でした。つまり、この映画は、当時のいわば“悪”のもとで結果的に働くことになった普通の人が、現在では何を感じているのかということを映し出しています。

映画はモノクロで作られておりまして、監督は、色や音を削ぎ落とし、彼女と一対一で対話しているような空間を作り上げたかったそうです。資料映像も、ところどころ挿入されております。アメリカ合衆国ホロコースト記念博物館の協力のもと、フィルムの色や音を一切編集しない未公開のマスターの素材を使用しております。

監督は、同じプロダクションの4名で、そのうちの2名の監督が先日来日されました。代表格であるクリスティアン・クレーネス監督と、フロリアン・ヴァイゲンザマー監督でございます。

日本の社会は今ひどい状態になっていると私が申しましたところ、お二人は、ヨーロッパも同じです、と。「当時と現代社会はよく似ています。ですから、その時代に自分がいたら、どのように行動していただろうか。この映画は、戦争における個人の責任について問いかけています。」と仰っていました。

皆さまにも、ぜひじっくりこの映画をご覧いただきまして、もし良かったとお思いでしたら、お友達やご家族の方におすすめいただければ幸いです。最後になりましたが、この大変貴重な映画を上映する機会をご提供くださいました、サニーフィルムに心より御礼申し上げます。皆さまどうぞごゆっくりご覧ください。本日はありがとうございました。

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