「ナポリの隣人」初日支配人挨拶
2019年02月09日(土)

「ナポリの隣人」初日支配人挨拶

支配人挨拶

本日は、イタリア映画「ナポリの隣人」の初日に、この雪の中、大勢お越しくださいまして、誠にありがとうございます。岩波ホールの岩波律子でございます。

本日2月9日は、岩波ホールの創立記念日でございます。実は、総支配人の髙野悦子の命日でもございまして、今日は七回忌にあたります。大きな柱を失った私どもですが、ここまでしっかり続けてこられましたのも、皆さまのご支援のお陰だと大変感謝しております。先代の社長や髙野も、大変喜んでいると思います。

さて、「ナポリの隣人」を監督したジャンニ・アメリオさんの作品ですが、岩波ホールでは2006年に「家の鍵」、2012年にアルベール・カミュ原作の「最初の人間」を上映しておりまして、この作品が3本目となります。イタリア映画は人間の描き方が素晴らしいと定評がございますが、2000年以降、岩波ホールでは14本のイタリア映画を上映してまいりました。

その中には、昨年亡くなられた巨匠エルマンノ・オルミ監督の「ポー川のひかり」「緑はよみがえる」など4本、それから、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「家族の肖像」の再上映もございました。そのほか、「輝ける青春」「ジョルダーニ家の人々」という、6時間にわたる長編も2本上映して、大変好評をいただきました。これらの作品を見ていますと、とかくイタリアは家族の結束が強いという先入観がありました。「ジョルダーニ家の人々」を上映した際は、映画会社の方と、イタリアは家族関係が非常に親密なので、オレオレ詐欺はあんまりないんだという話を聞いたこともありましたが、本作では、現代のイタリアの家族の厳しい状況が描かれています。

監督は、「この作品は、家族の間にただよう不穏な感情の物語です。ここにある愛は、いつも恐れを伴い、人と人との関係に均衡点を誰も見つけることができません。この作品は、私たちにとって他人事ではない不幸を描き、声高に叫ぶこともせず、無限に寄り添う物語」だと語っていらっしゃいます。さて、振り返って日本でも、家族とはいったい何なのかと考えさせられる事件が日々起こっております。この作品が、厳しい現代社会に生きる私たちの、心の繋がりに思いを馳せるきっかけとなればと願っております。この大変立派で、厳しい作品を上映する勇気と機会を与えてくださいましたザジフィルムズと、朝日新聞の皆さまに心より御礼申し上げます。

関連記事

トピックス一覧へ

Iwanami Hall
公式Twitter