本日はフランス映画「12か月の未来図」にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。岩波ホールの岩波律子でございます。
岩波ホールでは、2000年以降だけでも学校にまつわる映画を何本も上映しています。フランス映画ですと、幼稚園をテーマにした「今日から始まる」(01)や、カンヌ映画祭でグランプリを撮った「パリ20区、僕たちのクラス」(10)もかなり評判になった作品です。
今回の「12か月の未来図」でございますが、フォトジャーナリストとしてスタートした監督のオリヴィエ・アヤシュ=ヴィダルさんが初めて作った劇映画です。その前にも短編の劇映画などを作られています。フランスでも大きな問題になっている移民の子どもたちの学力低下と、教育の不平等について取り上げています。監督は、ひとつの中学校に二年間通って、500名の生徒と40名の教師に交じって学校生活を送り、この作品を完成させました。
物語は、名門校の教師が、パリ郊外の教育困難中学に送り込まれて、葛藤する様子を描いています。監督さんによれば、子どもたちの最も重要な資質は、青年期への転換点である中等学校で花開いているということです。そして、この映画では学ぶことの楽しさを描きたかったと述べておられます。この映画の中で、プロの俳優が演じているのは、主人公のフランソワ先生をはじめとする大人の役だけで、子どもたちはそのまま自分たちを演じています。作品の中にはコメディの雰囲気も取り入れられています。尚、先生役のドゥニ・ポダリデスさんは、非常に教師を演じるのにふさわしい人だと思われていて、教師の一家だそうです。
さて、来日された監督から、外国の人が増えている日本へのアドバイスをいただきました。彼の個人的な意見ですが、フランスのような二の舞にならないように、国がきちんとした体制を整えて、誠実に受け入れるべきですということでした。
監督はジャーナリストでもあるので、私どもが接待するよりも、かえって私たちが色んな質問をされてしまいました。そして、仕事の後は東京周辺を色々とリサーチして歩かれたようですが、いつか日本についての映画も作ってくださると嬉しいなと思います。
最後になりましたが、この映画を提供してくださいましたニューセレクト、アルバトロスの皆さまに心より感謝申し上げます。本日はありがとうございました。