本日は、梅雨の鬱陶しい気候の中ですが、フランス映画「田園の守り人たち」の初日にお越し下さり、ありがとうございます。岩波ホールの岩波律子でございます。
この作品は、グザヴィエ・ボーヴォワ監督によるもので、第一次世界大戦の折に、男たちが戦地に行っている間、家に残った女たちが田園を守ったお話です。原題の“Les gardiennes”は守る女たち、という意味です。監督は原作となる小説を読んで、中心人物の殆どが女性であるという点が気に入って映画化することを決めたそうでございます。
私どもにとって戦争というと、どうしても第二次世界大戦を思い浮かべますが、ヨーロッパの人にとっての戦争というと第一次世界大戦、というくらい深い傷跡を残しているそうです。
主人公は、母親を演じるのがナタリー・バイ、その娘役は、ナタリー・バイの実の娘であるローラ・スメットが担当しています。そして、この農園に雇われてくる若い娘フランシーヌは、まったくの新人で、キャスティングディレクターが偶然本屋で出会った女性に声を掛けたのがきっかけで、この作品の中では結果的に大切な役割をこなすことになりました。また、音楽を担当したのは「シェルブールの雨傘」などで著名なミシェル・ルグランですが、残念なことに今年1月に亡くなりました。
この作品では、フランスが農業国であるということが実に良く分かる、美しい田園風景が、これもまた女性である撮影監督のキャロリーヌ・シャンプティエによって、映し出されています。映画の初めの頃は機械化以前の農業が描かれていますが、次第に機械が導入され、のちの第二次大戦が近づきつつあるのだろうか、ということが暗示されているようです。女性の持つ力と運命について、考えさせられる作品です。ロビーでは、第一次大戦にまつわる書籍を何点か並べてございますので、どうぞご覧になって下さい。
最後になりましたが、この立派な映画の上映の機会をご提供下さいました、配給会社アルバトロス・フィルムの皆さまに心よりお礼申し上げます。