本日はレイモンド・ブリッグス原作、ロジャー・メインウッド監による「エセルとアーネスト ふたりの物語」の初日においでくださいまして、有難うございます。岩波ホールの岩波律子でございます。
私どもでは、10年余り前に、川本喜八郎監督の人形アニメーション「死者の書」を上映しておりますが、今回のようなアニメーションの公開は初めてになります。確かに、他の大きな劇場では日本のアニメはたいへんな人気ですが、この作品はスタッフみなが感動した良い作品でしたので、アニメだからというハードルはありませんでした。映画関係者からは、アニメが子どもだけのものでなく、大人の見られるものになったことが、嬉しいという感想をもらいました。
さて、この作品は皆様よくご存知の「スノーマン」などの絵本作家、ブリッグズさんが描いたご両親の物語ですが、戦前から戦後にかけて懸命に生きた普通の人々の物語です。確かに大人のアニメーションということで、制作のスタートは困難があったようですが、スタッフの方々は当時の町並み、家の中、服装等細かくリサーチしました。特に、ブリッグズさんの家は大きさ、家具、広さなど本物のサイズの割合を測って、縮小するなど実に丁寧に再現されています。また、音響のチームは昔の牛乳配達車や年代物の自動車の音、登場人物の足音等、すべて本物の音を集めました。また、エンディングに流れる音楽は、ポール・マッカートニーによるものですので、是非最後までお聞きになってからお帰りになってください。
こうして、この作品は当時の暮らしと状況を丁寧に再現した貴重な記録となっておりまして、日本でもそういうことがあったなと思い当たることが、たくさんあります。そして、これらすべてのことを通じて、ブリッグズさんのご両親に対する愛情、さらにはスタッフのブリッグズさんに対する敬愛の念がこもった、温かい作品となっています。この作品を通して、普通の人々の暮らし、家族とは何かということを感じ取っていただければ幸いでございます。
ロビーでは、この映画の原作本もお売りしていますので、ぜひご覧になって下さい。最後になりましたが、この映画を配給して下さったチャイルド・フィルムとムヴィオラの皆様に心より御礼申し上げます。