支配人のコラム <外国映画史の研究>
2020年10月23日(金)

支配人のコラム <外国映画史の研究>

支配人挨拶

<支配人のコラム 外国映画史の研究>

前回ご紹介した1968年開始のプログラム「戦後日本映画史」はフィルム・ライブラリー協議会の後援によって、充実した催しものとなりました。それから約一年後には、やはり同協議会の後援により、70年代前半にかけて、「講座・ドイツ映画史研究」「イギリス映画史研究」「イタリア映画史研究」「フランス映画史研究 戦前編」「ソビエト映画史研究」が次々と行われ、高橋義孝、中野好夫、山崎功、河盛好蔵、野口久光、山田和夫さんなどのすぐれた講師の方々をお迎えしました。

これらの白黒映画を当時集中して見られたのは私にとっても本当に良かったと思います。第二次大戦の足音がそろそろ聞こえてくる1930年代の映画の豊かさ。若いころにこれらの作品を鑑賞していた先代の岩波雄二郎社長とも、話が合うようになりました。また、ドイツ映画の「制服の処女」は、かつて東和商事の社長夫人でもあった、フィルム・ライブラリーの川喜多かしこさんがヨーロッパへの新婚旅行のプレゼントでお選びになったというエピソードがあります。このように髙野悦子と川喜多さんはエキプ以前から深いご縁があり、「エキプ・ド・シネマ運動」が始まったのです。

さて、イギリス=アメリカ映画の「旅情」はヴェネツィアを舞台に、キャサリン・ヘプバーン演じる独身の中年女性の淡い恋を描いた映画でした。その後、大人になってからそこを訪ねる機会があり、驚いたのは、海に面した街が“磯臭い”ことでした。このとき、映画というものは映像、音はあっても、匂いはないのだな、と改めて感じたのです。

その後、映画史研究は、好評につきドイツ、イタリア、フランス映画は再度「特集」として、72~74年に上映されました。その他、エキプのスタート以前にはワイダ、カヴァレロヴィッチなどの「ポーランド映画特集」や、キューバ映画研究所の若い映画作家の作品を集めた「キューバ映画祭」も行われています。

なお、1968年の11月には「講座 シネ・ポエム」という詩情あふれる短編特集の一環として、ノーマン・マクラレン作品「線と色の即興詩」「算数あそび」などが紹介されました。71年2月には「ノーマン・マクラレンを讃える」という企画があり、2日間にわたり同氏の講演と作品10本あまりの上映が行われました。その後、人形アニメーションの川本喜八郎監督(「死者の書」2006年公開)から、当時マクラレン氏の講演と上映に参加していた、というお話をきき、感銘を受けたことを思い出します。

*写真は、講座「フランス映画史研究」での野口久光氏(映画評論家、グラフィックデザイナー)

*このコラムは、第2、第4金曜日に掲載いたします。次回は11月13日の予定です。

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