「みかんの丘」/「とうもろこしの島」初日支配人挨拶
2016年09月17日(土)

「みかんの丘」/「とうもろこしの島」初日支配人挨拶

支配人挨拶

本日は、グルジア、現在ではジョージアと呼びますが、そのザザ・ウルシャゼ監督による「みかんの丘」/「とうもろこしの島」の初日にお越しくださり、有難うございます。

岩波ホールのエキプ・ド・シネマでは、今までにジョージアの映画を8本ご紹介しております。「放浪の画家ピロスマニ」は昨年末に再上映いたしました。そして、「田園詩」「懺悔(ざんげ)」などです。そして今回のアブハジア紛争を取り上げた「みかんの丘」「とうもろこしの島」を加えると10本になります。

「みかんの丘」は、1990年代頃のジョージア西部にある、アブハジアでみかんを栽培する男たちの物語です。主人公の老人はここから遠く離れた国、エストニアの人ですが、戦闘で傷ついた敵同士である、チェチェンの兵隊と、ジョージアの兵隊を自宅で看病することになり、それから何が起こってゆくかという物語です。これは、人間としての誇りと、戦争の不条理が描かれる、たいへん心を打つ作品です。

監督のウルシャゼさんは、ジョージア映画アカデミーの代表を務める、50代という働き盛りの年代の方です。彼は、「映画という芸術が戦争を止めることはできなくでも、戦争を決断する人たちがこの作品を見て少しでも立ち止まり、考えてほしい」と語っています。

もう一本の作品、ギオルギ・オヴァシュヴィリ監督による「とうもろこしの島」は、同じ紛争の中、エングリ川の中州で淡々と、とうもろこしを育てている老人と孫娘の物語です。この作品は、せりふが非常に少なく、めぐりゆく大自然と、人間の営みを対比させて、戦争の意味を私たちに問いかけています。

監督のオヴァシュヴィリさんは、こちらも50代の方で、これが長編の第2作目であり、国際的に高く評価されました。彼は「今日の難しい世界情勢に対して、芸術が解決できる問題は少なくありません。「とうもろこしの島」には、私たちの姿勢を相手に示して、互いに小さな架け橋になってほしいという願いがこめられています」と語っています。こちらは、「みかんの丘」とちがった趣のある、やはり優れた作品ですのでぜひご覧いただければと存じます。

岩波ホール支配人 岩波律子

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