本日はパトリシオ・グスマン監督の「夢のアンデス」の初日にお越しくださいまして、誠に有難うございます。岩波ホールの岩波律子でございます。
幸い、緊急事態宣言が最近、解除されまして、お出かけの際、少し気がお楽になったのではないかと、私どもも嬉しく思っております。
この作品の前に製作されました、「光のノスタルジア」と「真珠のボタン」は、私どもで2015年に上映しております。そして今回の作品を含めて、3部作と言われております。
「光のノスタルジア」と「真珠のボタン」を拝見しまして、監督さんは、詩人のような、哲学者のような人だなと感じておりました。宇宙、自然を通じて、人間の営みを見つめていらっしゃいます。
本作「夢のアンデス」は、ご本人も仰るように、少しトーンが異なります。ドキュメンタリーなので、出演される彫刻家ですとか、作家、映像作家の証言が入っておりまして、映画全体は、アンデス山脈が国の歴史を見ている、というトーンになっております。
映像作家として登場するパブロ・サラスさんが、大混乱の中、カメラを持って走り回っているのですが、よくこんなところで映像を撮れたな、と私は思っていました。監督自身も、このサラスさんのことを、何かを前にした際、自分の身体とカメラをどこにおけば良いか、正確に判断する力を持っている人です、と仰っていました。
なお、このところは監督さんに来日していただけませんが、オンラインでグスマン監督のお話を聞く機会がございました。綺麗なスペイン語で、お顔を見ながらお話を聞けて、たいへん嬉しく思いました。同時代の地球上に、このような哲学的な思想を持った作家がいらっしゃることを、本当に光栄に思います。こういう方が、人々の歴史をみつめて、記録し、考えてくださるのです。
この素晴らしい作品をご提供くださいましたアップリンクの皆さまに、お礼申し上げます。また、本作の上映期間中にグスマン監督の過去作である「光のノスタルジア」「真珠のボタン」、そして「チリの闘い 三部作」も上映いたしますので、お時間がありましたら、それも併せてご覧ください。
本日は有難うございました。どうぞごゆっくりご覧くださいませ。