「ジョージア映画祭2022」初日ご挨拶
2022年01月29日(土)

「ジョージア映画祭2022」初日ご挨拶

ニュース

ジョージア映画祭主宰 はらだたけひでさん:

本日は「ジョージア映画祭2022」の初日、それも第1回目にお越しいただき、ありがとうございました。私はこの映画祭を企画したはらだと申します。

今回の映画祭は、ジョージアのソヴィエト時代の名作を中心に、長篇短篇あわせて35作品を上映いたします。ソヴィエト時代、ジョージアの映画人たちは、大変厳しい表現の制約、検閲、そして政治的な抑圧の下で、ジョージアの民族精神と自由への思いを映画に込めて、一本一本製作してまいりました。ソヴィエト時代の作品数は、ドキュメンタリーやアニメーションをあわせて3000本と言われています。ソ連邦は1991年に解体したわけですが、多くのネガが現在もロシアの管理下にあります。そして、ジョージアにあったフィルムも、独立後の混乱の中で、ほとんどが傷ついてしまいました。この10~20年、ジョージアの映画人たちは力を合わせてそれらを修復し、またロシアから返還しました。実をいうと、今回上映する35作品が2019年の時点で、ジョージアが所有するソヴィエト時代のジョージア映画のほとんどすべてになります。

ジョージアの映画は、欧米の映画と異なる味わいがあります。ぜひこの機会に皆さんにジョージアの魅力を存分に味わっていただけたらと思います。

本日は開催にあたり、駐日ジョージア大使のティムラズ・レジャバさんにお越し頂いております。今日は民族衣装のチョハを着てくださいました。ではご挨拶をお願いいたします。

駐日ジョージア大使 ティムラズ・レジャバさん:

ご紹介に預かりましたジョージア大使のティムラズ・レジャバでございます。岩波ホールのジョージア映画祭に際して、皆さまにお会いできることをとても楽しみにしておりました。また、このようなご挨拶の機会を本当に光栄に思っております。これより、いよいよジョージア映画祭が始まるわけですけれども、30作品以上が揃う、日本で実施されるジョージア映画祭の中では、最大レベルのものになっております。映画は20世紀の最大の芸術でありますけれども、その数々の名作を前にして私の言葉で飾るのは非常に至難の業と言っていいほどなのですけれども、謹んでご挨拶申し上げたいと思います。

我が国は、先ほどもご紹介にありましたように、地政学的に非常に難しい国際情勢におかれておりまして、様々な脅威にさらされてきた歴史がございます。一方で、そのような土壌で培ってきた誇れる文化もございます。日本の場合は、きらびやかな自然がありますが、同時にやはり地震や災害などもありまして、やはり豊かさと脅威は背中合わせだと思います。ジョージアは歴史の中で、そのアイデンティティを文字通り死守して、ここまで継承してきました。困難な時こそ、団結力が強まり、精神力が高まり、そこで新たな価値がしばしば生まれてきました。その一部に芸術があります。ジョージアの芸術には、思い返せば常に時代背景や文化的な要素が含まれておりました。ソ連時代、そしてそのあとのジョージア映画の中にもまさに、様々な制圧を打開しようとする力で、自由と解放を求めて生まれた作品が多いです。このような認識のもと、私はジョージア大使として、ジョージア文化を継承することに強い責任感と意義を感じており、だからこそ、日本にジョージア文化を伝えることに、力を傾けてまいりました。昨今は、ジョージア料理が日本でも流行っております。これは日本でジョージア文化を直接体験できるということで、とても喜ばしいことであります。一方で、映画というのは直接“人の心”に届くものです。映画で感じた味というのは何十年経ってもその人の心に残っているのではないでしょうか。その点で、特に独自の世界観が強いジョージア映画は、我が国の精神を伝える大事な文化です。映画や映画監督、もしくは関係者にとって、一番の成果は多くの人に表現しようとしていることが届くことでないでしょうか。ということで、今日はまさにお越しの皆さまに、心より感謝を申し上げたいと思います。

さて、これから、これまでのように末永く、岩波ホールでぜひ多くの方にジョージア映画に触れていただきたいと言いたいところですが、皆さまもご存知のように、岩波ホールの閉館が発表されました。

岩波ホールでは、本当に長年にわたって、多くのジョージア映画が紹介され、今年で外交樹立30周年を迎えるジョージアと日本の交流において、多大なる貢献をしてきました。2019年にジョージアのズラビシュヴィリ大統領も岩波ホールを訪問するなど、私も思い出が絶えません。おそらく皆さんの多くも同じような心持ちではないでしょうか。この場をお借りして、岩波ホールのご関係者の皆様に心より御礼を申し上げたいと思います。

今は亡き髙野悦子さんは、生涯にわたって総支配人として、多大なる貢献をしていただきました。心より敬意を表したいと思います。また、今回の企画の立役者は、はらだたけひでさんです。そして字幕の監修など、翻訳者として、長年、児島康宏さんがジョージアの細かなニュアンスを伝えようと、多大なる貢献をしてくださいました。あわせて心より御礼を申し上げたいと思います。少し長くなりましたけれども、岩波ホールにおける最後のジョージア映画祭の開幕を心よりお祝い申し上げます。以上、私からご挨拶とさせていただきます。

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